NULL A の世界の感想

　いよいよ始まりました『成恵の世界』、今期はこのアニメをチェックしていきたいと思います。
　あらかじめお断りしておきますが、私はこの原作をチェックしていません（噂には聞いていましたが）。従って原作派の人にはとんちんかんな感想になってしまうかもしれませんが、ご容赦ください。


◆庶民派宇宙人、七瀬成恵
　父親と二人で安アパートに住んで、狭いキッチンで自分で料理。大根一本１５０円を購入するのにためらって半分にしてもら、牛乳を瓶から残すともったいないと怒鳴り込む貧乏性。そして趣味は女性週刊誌の立ち読み
　とても宇宙人とは思えない成恵の庶民派の暮らしぶりがナイスです。
　冒頭のシーンとしてはインパクトが弱かったかもしれませんが、それ以外は特に問題がありません。
　成恵の表情が無愛想に描かれていますが、それは自分が宇宙人であることを受け入れてもらえないという疎外感からでしょう。
　しかし、親の就職先が『銀河系連盟』で、安アパートの表札に『銀河系連盟連絡所』とあるということは、特に秘密にしているわけではないのですね。その割には本気で信じてもらってないみたいですが、無理もないかも。

◆ごく普通の高校生、飯塚和人
　そんな成恵に助けられた和人ですが、名簿の親の就職先の欄に『銀河系連盟』とあるのを見て……そりゃあ戸惑うでしょうなあ。それを見て地球侵略とか宇宙飛行士を連想するのがいかにも少年ですが。
　いわゆる一目ぼれか、「ななせ」と書かれたバットを返すついでにデートに誘います。最初は素気無くなれていたけど、成恵が宇宙人だという告白を弾みで受け入れてしまったらいきなりおうちにご招待（本人は、単にお茶代がもったいないかららしいけど……貧乏性だなあ）

◆宇宙人襲来、安アパートの攻防
　成恵の安アパートには宇宙人犯罪者が強盗に押し入り、父親の正を人質にとっていた。
　安アパートという時点でリアルさはないし、父親はどう見ても甲斐性なしなのですが、あれでも宇宙では敏腕警察官（？）なのだろうか。実際には窓際で、だから地球に飛ばされてきていたりして。
　……と、それにしてはアバロン人の強盗は「七瀬の娘」と呼んでいたし、そういう呼び方とされるということは正は宇宙では少しは名が知れているはずだから、何か事情があるのかもしれませんね。
　金属バットで宇宙人に不意打ち掛けようとした和人は、土足でアパートに上がるというマナー違反のために成恵にコケされられる。成恵ちゃん、突っ込みどころが違うだろう？

◆そして二人は恋人同士へ
　和人と成恵は、「和ちゃん」「成恵ちゃん」と呼び合う関係に。
　成恵が宇宙人だということよりも、宇宙の映像を見せられたよりも、自分に恋人が出来た方を喜んでいるあたりに、和人も大物ですね。


　第１話を見た限りでは、科学の進んだ宇宙人なのに未来的イメージが全然なくて、むしろいじましいくらいの貧乏くささという成恵のギャップがウリの作品のようですね。今後ともできるだけいじましい成恵の姿が見たいものです。
　

初出：03/ 4/14 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/narue_tv1.htm#1

　「成恵の世界」の基本フォーマットは、ごく普通の高校生と宇宙人な彼女のラブコメディ──これって８０年代型ラブコメの典型的なパターンではありませんか。
　なるほど、どおりでひと目で気に入ったはずだ。随分懐かしい感じがしたものです。


◆交際申し込みの報告
　交際申し込みに成功したことを、丸尾に報告する和人。ふんふんとうなづく丸尾だけど、成恵が宇宙人のくだりでとまってしまう。そりゃそうだろうなあ。

◆丸尾のデート必勝講座
　初デートに失敗してだめになった男は多いと丸尾に忠告される和人。丸尾のデート必勝講座とは……
　・待ち合わせは時間厳守。彼女より先に現場に行くべし。
　　→夕べは寝付けなくて寝過ごしてしまった（ダメじゃん）
　・気取った頭は嫌われる。必ずシャンプーしてからさらさら頭でセットしろ。体は隅々まで洗って、石鹸の香り。
　　→いつもと変わらない頭。寝過ごしているからなあ……
　・鼻から鼻毛はいっぺんで嫌われる。常にチェックしてはみ出ていたら容赦なく抜け。
　・デート代は全て出して甲斐性をみせろ。彼女に財布を出させるな。
　　→成恵が割り勘で押し通す。揉め事の原因となるかららしいけど、デートのときにそんなことまで考るのもなにかいやーん。
　・ゲーセンには行くな。ゲームに夢中になって彼女をおそろかにする恐れがある。
　　→彼女の方からゲーセンに入ったらどうすればいいの？
　・映画にいったらポップコーン。酢昆布はやめとけ。
　　→チケット紛失騒動で時間がなくなって買い忘れ。しかも夜更かしのため鑑賞中に成恵が寝てしまう……
　・彼女から「ありがとう、今日は楽しかったわ」の声を聞くことができたら成功。
　……丸尾君って、デートの経験があるのだろうか。なんかもう偏見に満ちた必勝法って感じ。多分こちらもデート必勝マニュアルの受け売りでしょう。
　まあ、デートは必ずしもマニュアルどおりにはいかないということで。

◆八木の乱入
　天文学マニアでＳＦオタクの八木にとって、宇宙人とはグレイとかスペースブラザーとかそういう典型的なものなのでしょう。少なくとも安アパートで家計をやりくりしている七瀬成恵みたいなのは宇宙人と認めたくないと。
　しかし、あの八木の宇宙人観って一体なんなんでしょう。
　八木はおそらく母子家庭で、しかも母親不在になりがち。だから宇宙に思いをはせていて、いつか宇宙人と仲良くなるのが夢なのでしょうね。
　だから宇宙人を詐称（八木主観）する七瀬の存在が許せなかったということか。
　そんなことより、私は丸尾と八木が幼なじみだということに驚いたぞ。丸尾は八木の口から、成恵が（自称）宇宙人だと聞かされたことは無かったのだろうか。

◆初デートは……
　初めてのデートは成功でした。テレポートを使えば一瞬で帰れるとしても、デートにそんな野暮は禁物でしょう。歩いて送っていくのは、基本ですよ。


　なんかもう宇宙人ではなくて本当にどこにでもいる普通の女の子ですね、成恵ちゃんは。
　次回予告では、飯塚和人君のオタクな部屋が見られるみたいです・
　

初出：03/ 4/21 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/narue_tv1.htm#2

　今回の感想──和人、おまえイタすぎ (;ノ-Д-)ノ


◆彼氏のお部屋にご訪問
　テレポーテーションの話題から、今一番行きたいところという話になって「和ちゃんのお部屋」へ。
　年頃の女性が男性の部屋にご訪問というのは、そのままお持ち帰りされてもおかしくはないのだが、多分成恵にそこまでの意識は無いんだろうな。和人もそこまでの度胸も甲斐性もなさそうだし。
　意外と広い和人のおうち。画面にでてこなかった父親の甲斐性の賜物でしょうが、この話って東京都内なのでしょうか。宇宙人とかのエイリアンがご町内に居つく場合たいてい練馬区だと相場が決まっているのだが（←偏見？）。

◆カルチャーギャップ
　オタクの入った和人のお部屋。健全たる男子が個室を持っていた場合、そこにエロ本があるのはデフォでしょう。年頃の女子に見せたくはありませんが。
　それはさておき、和人のパソコンを触ってみる成恵。
　マウスを持って「えーもしもし、コンピューター応答せよ」──マイクじゃないんだけど。
　（ＯＳが）立ち上がるまで時間がかかると聞いて、ロボットに変形するパソコンを想像したり。
　確かにＳＦの世界にいる成恵なら、コンピュータはそういう認識なんでしょうが。パソコン文化とのギャップがばかばかしくもおかしかったです。

◆「魔法少女四号ちゃん」
　エロ本やマンガ本が散らかっていたり、パソコンの壁紙が水着モデルなのはまずいことは和人も分かっていたのですが、──いくら間が持たなくなったからといってアニメはまずいでしょうが、アニメは。
　しかもオタク少年にありがちな態度として、相手の興味に関係なく自分の知識を一方的にまくし立てる。普通は引いてしまうな。百年の恋も覚めてしまうな。
　あまり認めたくない現実ではあるが、女性はたとえ自分がオタクであってもオタク男性だけはイヤだという傾向が強い。ましてやその気の無い女性では……
　丸尾、きちんとアドバイスしてやれよ。彼女の前でアニメはご法度だって。
　それはさておき──どうでもよくないが──劇中劇の「魔法少女四号ちゃん」
　内容は魔法少女というより、美少女戦隊もの。もっとも内容は少女向けではなくて完全にオタク向け。というよりＤＶＤ超限定版が発売されている時点ですでにアニメオタク向けでしょう。きっと四号ちゃんのプレミアムフィギュアとかそういう内容に関係ない特典がついていたに違いない。

◆監察庁のテイルメッサー
　秘密の丘に和人を連れてきた成恵。そこで二人で瞑想しているときに、タイムステイシールドで時間停止状態になっていることに気づきます。
　そこに現れた銀河系連盟監察庁の役人。名前は多分テイルメッサー（エンディングより）。
　和人に銀河系連盟のことを教えすぎたのを咎めにきたみたいです。宇宙人が地球に居つくことをあまり好ましく思っていないようでもありますな。
　しかし、惑星日本って一体……地球が特別な星だというのはどういうことでしょう。いや、それよりもなぜ宇宙人の宇宙船に「監察庁」などという漢字が書かれているのだ？
　謎ですね、これは。

◆プレゼント
　成恵から「丘の石」をプレゼントされた和人。鯨の画像をプリントアウトしてプレゼントしたときに、「大切なのは何をもらったかではなくて、誰から貰ったか」と成恵に言われたことを思い出します。
　うむ、例え何の変哲も無いただの石でも、和人にとっては宝物になりますね、これは。

　今回はオタク少年和人くんのアレな私生活がかいま見えました。もっとも、本人がオタクだからこそ、成恵のＳＦな世界も素直に受け入れられたのでしょう。多分
　

初出：03/ 4/28 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/narue_tv1.htm#3

　成恵の母星が惑星日本だったり宇宙船が家屋敷に再構成されたりするぐらいリアリティ無視の設定のくせに、ウラシマ効果はきっちりと取り入れている「成恵の世界」。ウラシマ効果を取り扱ったＳＦアニメというとまず思いつくのが「トップを駆けろ」ですが、こちらはあくまでコメディのネタ程度に抑えていますね……（と信じたい。「トップ」も最初はパロディから始まったからなあ）

◆モーニングタイム
　女の子がエプロンつけて朝食の用意をして、優しく起こしてくれる。まさに男の願望を絵に描いたような光景ですが……人の家の部屋に無断でテレポートするなよ。

◆年下のお姉ちゃん・香奈花
　自分に腹違いのお姉ちゃんがいたことを素直に喜ぶ成恵。しかし現れたのは、自分より２歳年下の女の子だった。
　現れたタイミングも最悪でしたね。香奈花が訪問したアパートの表札には「成恵」という見慣れない名前が。ドアを開けたら父親の正は着替え中。そこへ成恵がテレポートで帰宅。いくらなんでも幼な妻は無いでしょう。
　星門を通った正は一瞬で地球に着いたが、家出して密航した香奈花は貨物船の中で過ごした数週間が１５年となってしまったらしい。すると香奈花の母星は最大で地球から１５光年未満ということになるが、すると（おそらくは個人所有の）宇宙船で現れた理由が説明つかなくなります。香奈花の台詞から、どうやら貨物船で密航していた香奈花を途中でバチスカーフが見つけてくれたらしい。

◆七瀬家１５年のあゆみ
　ショックを受けた香奈花はバチスカーフ（侍女かあるいは宇宙船のＡＩか）に命じて七瀬家のことを調べさせる。
　近隣の星船は常に七瀬家の行動をモニターしているからと、第十九戦術の秦風（ハタカゼ）を呼び出す。……って、七瀬家にプライバシーというものはないのか！？
　それによると成恵の母親は地球人でムツキナルミ（漢字不明）という名前らしい。正の再婚相手ということだが、香奈花の言葉によると香奈花の母親は別に死亡してはいないようだ。おそらく仕事上のすれちがいから香奈花ママと離婚した正は地球に単身赴任してから、現地妻としてムツキと結婚したのかもしれない。
　それにしてもバチスカーフのような侍女あるいはＡＩを持っているとは、七瀬家は宇宙に帰ればかなりのエリート階級だったのかもしれない。
　ただ……香奈花の回想シーンではネクタイに背広を着たさわやかなお父さんだった正が、今では安アパートにすむ甲斐性なしのオヤジと化してしまうとは。この１５年間地球でいろいろ職を転々としてきたようだし。月日の流れとは残酷ですなあ。

◆母の伝言
　伝言というか、要するに謝罪。自分も宇宙で仕事をしているため、ウラシマ効果で香奈花と同じ時を過ごせなかった香奈花ママのお詫びの言葉です。
　年上の妹、成恵に対して護身銃を撃ってしまった香奈花。自分のいない１５年間を父親と過ごした妹だから、香奈花にしてみれば自分から父親を奪った一人。だから素直に謝ることができない。
　しかしバチスカーフの伝言から、母親も今の自分と同じ思いをしていたことを悟ったということですね。それなりに仲直りのきっかけとなったと。

◆仲直り姉妹
　護身銃で寝込んだ成恵を、一晩看病する香奈花。そんな姉に抱きつく成恵。成恵の抱きつき癖は、母親譲りのもののようです。

　そういうわけで、姉との初対面を果たした成恵。自分より年下の姉と言うのは微妙な存在ですが、どうやら香奈花はトラブルメーカーになりそうですね。というか、空き地に勝手に着陸して家を建てている時点でトラブルメーカーでしょう。
　

初出：03/ 5/ 7 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/narue_tv1.htm#4

　イジメをする人間はいるものの、基本的にいい人ぞろいの「成恵の世界」。今回は香奈花とはじめの友情物語でした。

◆香奈花の屋敷にて
　香奈花の家で食事の用意をする成恵。アパートの方が落ち着くという正のおかげでまだ同居はしていないようですが。
　いきなり空き地に建った屋敷で周辺の住民は驚かないのだろうか。地権者はどうしているんだろうか。やはり宇宙の超科学でごまかしているのだろうか。疑問はつきない。
　バチスカーフから、香奈花が成恵と同じ中学に通うことを聞かされる。妹の下級生になるというのは確かにちょっと屈辱かもしれないが、実際香奈花の方が年下なんだから仕方ないのでしょうが。。
　極力（宇宙人という）秘密を明かさぬようにとバチスカーフに念を押されてましたが、成恵の親の勤務先が「銀河系連盟」となっている以上、あまり意味ないと思いますが。香奈花も親の勤務先が「銀河系連盟」となっているのだろうか。

◆アジのヒラキ型ＵＦＯ
　深夜の公園で天体観測しているはじめの元を訪れる香奈花。葉巻型ＵＦＯの目撃証言の話を聞いて「バチスカーフのことだ」と顔をしかめる。
　はじめの真剣さに香奈花はバチスカーフに適当なものを空に飛ばすよう指示しますが、写真に写ったものはアジのヒラキ……。
　それはそうと、あそこまでアジのヒラキのディテールが詳しく映し出されるなんて、随分と高性能な望遠カメラを持っているのですね、はじめは。

◆香奈花のイジメ、はじめのイジメ
　１年２組に転校してきた香奈花ですが、お嬢様と勘違いされた上実は宇宙人という秘密を抱えているせいか、クラスメートの質問にはっきりと答えられない。
　──と、そうなったら一転、お嬢様だからと気取るんじゃないってイジメが始まる。というか、帰国子女（ということになっている）だからっていきなりイジメるか普通。するんだろうなあ。
　一方、はじめの方は登校中和人と一緒にいたからというだけで工藤たちイジメグループに無理矢理横恋慕の話をでっち上げられる。こちらはもともと人付き合いが悪いせいか友達がいないタイプですが。
　ああ、イジメかあ。なんか身につまされる話だよなあ。

◆対決、成恵対はじめ
　はじめの家に訪問して、最近の話題とかゲームとかを教えてもらう香奈花ですが、はじめ自身も女の子同士の話題には疎い方です。だからこそ、ＳＦ関係とかに詳しくなったんだろうけど。
　はじめの家は両親が離婚して母子家庭ですが、母親も仕事が忙しくてほとんどはじめ一人だけという境遇でした。同じく女の子の話題についていけず一人ぼっちの香奈花とは親近感を感じたのでしょうか。
　だが帰り際、香奈花のことを心配した成恵が割って入ってくる。まあ成恵の立場だと、はじめが自分の身辺を嗅ぎ回っていると考えても不思議じゃないけど。
　こういう立場上からのすれ違いは作劇の基本ですが、せっかくできた友達との関係を気まずくされた香奈花が怒るのも無理ないかも。
　バチスカーフのとりなしで互いの立場を理解する成恵と香奈花。超技術で全てを知ることができるバチスカーフて結構便利な存在かも。
　そして香奈花につれて来られて、はじめに謝罪する成恵。香奈花を触媒として打ち解けあう成恵とはじめですが、なぜ年下の香奈花をお姉ちゃんと呼ぶのかと突っ込まれて返事ができない。──まあ、せっかく仲良くなれたのにウラシマ効果なんて正直に答えたらまた馬鹿にしていると怒られるのは目に見えてますな。

　話としてはＢ級ですが、そのベタベタな作りがかえって安定感をもたらしてくれています。うーむ、こういう王道な作品はいいですねえ。
　

初出：03/ 5/12 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/narue_tv1.htm#5