天地無用！ＧＸＰ：アンラッキーな感想

　天地「でも宇宙人なのになんでＧＰって英語なの？」
　美星「宇宙でも英語は義務教育ですよ！」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あずまきよひこ作『あずまんが』より

　ってゆーのはさておいて。
　久しぶりの「天地無用！」ということで、期待にワクワク・ドキドキ・ハラハラしながら見ました。
　監督がワタナベシンイチでシリーズ構成が黒田洋介というところで、一抹の不安を感ていないわけでもありませんが。
　やけに独り言の多い主人公やら、一息でいろいろ喋りまくるギャラクシーポリスのお姉さんやら、意味もなく自転車の溶接ができるお友達やら。これは絶対に黒田洋介の脚本に違いない！　と思っていたら、よくよく調べてみると脚本は白根秀樹さん。
　白根さんは確か元オルフェの社員で、従って黒田さんを師匠筋に持つ人ですが、それにしてもこのわざとらしいほど強調されたコメディは何だろうと思っていたら、絵コンテはナベシン……。なるほどと頷いたのは内緒にしてください。

　主人公の西南は巡り合わせが悪く、自分にも他人にも不運をばらまいているという設定ですが、もともとこの世界にはとんでもなく運が良いキャラクターやら人間離れしたキャラクターが多いので、いまさらどうこう言うのも野暮でしょう。ただし天地本編の場合、それは全て宇宙人であるところがギリギリの分別でした。今回はその分別を取り払って平凡な地球の高校生というところが今までと違います。
　つまり西南は、純地球人でありながら強烈な個性を持った宇宙人キャラクターに対抗できるだけの個性の持ち主となります。

　前半登場した早回しのギャラクシーポリスの隊員、雨音・カウナックさん。一息でいろいろ喋りまくるセリフは脚本で１４行もあったらしいです。この雨音さん、天地家に訪問しているということは美星のお友達なのでしょうか。もしかしてＯＶＡ版天地無用！本編での美星の相棒だったりして（一般に美星の相棒として登場している清音は、林宏樹さんと長谷川菜穂子さんが作り上げたキャラクターで、本編には登場しません）

　もうひとりのヒロイン正木霧恋さん。西南のあこがれのお姉さんらしいですが、「正木」という姓は柾木家と何らかの関係があるのでしょうか？

　しかし主人公以上に家族のほうに問題がありますね、これは。ノリだけで何か分からないパンフレットにいきなりサインと拇印を強要するなよ。西南をギャラクシーポリスに身売りした途端ハワイ旅行が当たったというのも西南の巡り合わせの悪さを表現しているものでしょう。ビデオメールの件といい、実はギャラクシーポリスと通じていたのではないでしょうか。
　だがあの家がボロボロだったのは西南の巡り合わせの悪さが原因なのでしょうか。だとしたら西南をギャラクシーポリスが引き取ってくれたことで諸手をあげて喜んだのはむしろ当然かもしれませんね。
　きっとこの家族は、西南がギャラクシーポリスに出かけている間にお金を儲けて豪邸を建てているでしょう。

　細かいところで喜んだのは、西南が近道して柾木家の近所を通った時、ちゃんとニンジン畑が登場したこと。柾木家のデザインがきちんとＯＶＡ版だったこと。こういうこだわりは好きですね。

　あとＯＰには、ところどころニヤリとするキャラが登場していました。天地や阿重霞や魎呼のシルエットが登場しましたが、もう一人がよくわかりませんでした。砂沙美や鷲羽とは違うみたいですし、もしかして美星？　ずいぶんと髪型が違うようですが。
　あと、どう見ても清竜なキャラクターとか、神木瀬戸さまも登場してくるみたいですね。どんな役回りでしょう？

　

　海賊「古い一般航海法によるコード……まさか、ＺＺＺ（トリプルゼット）か！？」

　……本当に、宇宙では英語が共通語になっているのかもしれない。

　という疑問を抱いたのはさておいて。

　「ＧＸＰ」第２話みました。
　今回は第１話ほどくどい演出は見受けられないなと思っていたら、絵コンテがナベシンではなく村木靖さんでした。これはこれでかえって寂しいような気もしますが。
　……わがままだな

　今回を通じて一番印象に残っているのは案内人のおっさんのキャラクター。はっきり言って「私はただの案内人です」（第１話より）ですませるにはもったいないぐらいキャラが立っている。
　西南の愚問に真面目に受け答えしている時のやりとりといい、海賊に襲われた時の応答といい、本来レギュラーであるはずの美星母、美兎跳（みとと）と比べてもキャラが負けていない。エンディングにも案内人としか書かれていないが、名前のない脇キャラにしとくにはもったいないくらいだ。

　一番ウケたのは超空間ジャンプに関する西南とのやりとりですね。

　西南「で、でも、なんていうか、すごい衝撃があるとか、映像がブレて妙なものが見えたり見えなかったり……」
　案内人「ありません」
　西南「シートベルトをこんな風にぐるぐる巻きにするとか、対ショック防御とか……」
　案内人「必要ありません」
　西南「無意味に服が脱げちゃったり、口に出していえないような現象が……」
　案内人「これっぽっちもありません」

初出：02/ 4/13 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx1.htm#2

　女性案内人「いいえ、この居住区は亜空間の中に固定されているものですので、正確には水鏡様の中ではありません」

　亜空間……便利な言葉だ。

　今回はいよいよ樹雷の鬼姫、神木瀬戸さまと西南くんの体面です。

　冒頭のシーンは、前回の海賊襲撃事件をリョーコ・バルタの視点から描き直したもの。やはりあのランダムジャンプで西南が大勢の海賊を集めてしまったことがここで述べられていますが、前回のランダムジャンプの描写ではニアミスを繰り返したら大艦隊とぶつかったというだけの描写しかなかったような覚えが……。ちょっと描写不足だったように思います。
　というか、あの輸送船を襲撃する海賊の乗組員たちのはしゃぎようは、西南の悪運に引き寄せられて調子に乗ってしまった……とも深読みできますが、さすがに一見ではただのバカの集まりにしか見えませんでした。

　瀬戸と通信していた女性は正木霧恋さんですね。エンディングでもキャストが出てましたし、水穂が「海くんのお友達で……」と言っていたので、少なくとも正木家と樹雷には繋がりがあることが分かります。
　ここで出てきた水穂のお父さまとは勝仁（遥照）のこと。だとすると正木家は遥照の子孫である可能性もあり得るわけですな。地球人なのに宇宙と繋がりがあるわけですし。

　雨音・カウナックのことも説明にでてきました。瀬戸さまは雨音の見合いを（ひまつぶしに）セッティングしたことがあったわけですが……。
　ちょっとまて。銀河最大の軍事大国の裏の最高権力者がセッティングしたお見合いですと！？　誰がどう見ても政略結婚じゃないですか。樹雷四皇家の一つと親交のあるカウナック家も相当な名家のはずですし、そう簡単に断れるようなお見合いのはずないでしょう！？
　なのに、どうしてこう近所のおせっかいなオバサンのような感覚でいられるわけ。教えて瀬戸さま、プリーズ！？

　西南と面会して、まずは海賊捕縛のお礼を述べる瀬戸さま。海賊掃討任務についていたというけど、確か樹雷ももともとは海賊国家だったはず。まあ西洋でも国家公認の海賊である私掠船が活躍した時代もありますし、それほど奇抜な設定でもないけど、同類項のような気もする。
　西南の「不幸を呼び寄せる」才能を誉め称えた後に、地球人は宇宙へ乗り出せないと規則を持ち出して落胆させる。その上で特例もあると切り出して、西南のＧＰ入隊の決意を引き出させる……瀬戸さまも話の展開が上手いですね。大国の指導者だから政治の現場で交渉術は磨かれているはずですし、普通の高校生相手なら赤子の手をひねるようなものでしょうが。
　ここに出てきた「特例」とは、おそらく樹雷皇阿主沙の第一婦人、船穂のことでしょう。あと、平田兼光のおっさんも、「俺もこの手でやられたんだよなあ」とブルーになっていることから、もしかしたら地球人かもしれません。


　西南を勧誘に来たリョーコ・バルタ。アイドル海賊とはまた思い切った設定ですが、ギャラクシーポリスのメンバーがこんな体たらくで銀河の平和は本当に大丈夫なのだろうか。
　結局西南には断られるわけですが、西南の「海賊はいけないと思います」。ああ、なんて優等生的な発言。しかしリョーコは、そんな西南を気に入ったご様子でした。


　ＧＸＰではなぜか説明口調のセリフが多いなあと思ってみていましたけど、掲示版でなせさんに、
　梶島世界では登場人物の一挙手一動に膨大な量のニュアンスや裏設定が詰まっている。だから何気ない動作でも描写に気を抜くと説明不足となり、それを補うために説明セリフが多くなる。
　という主旨のご指摘を戴きました。
　言われてみればまさしくその通りで、裏設定の膨大な作品はたいがい説明セリフが多くなる傾向にありますね。特にテレビは制作に時間を追われるため、どうしても描写を練り込むことができずにセリフに頼ることが多くなります。
　それはそれで悲しいものがありますけど、仕方ないことなのかもしれません。
　

初出：02/ 4/20 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx1.htm#3

　アイリ「『なんとかと天才は紙一重』なんていうでしょ。彼もそのギリギリのラインを歩いていた頃は良かったんだけど……」

　宇宙でも日本語のことわざが通じているとは思わなかった。実は宇宙の共通語は日本語だったりして。

　冗談はさておき。
　今回は新キャラや懐かしキャラがたくさん登場を果たしましたね。

　冒頭、ドックの責任者として登場したのは九羅蜜美欄。美兎跳の父親にして本職はギャラクシーポリスの長官をやっている方でした。先週実父か義理の父親かは知らんがと書きましたが、あの西南の反応「そんな感じですね」に異論を唱えなかったところをみると、どうやら実の親子だったようです。
　でもなあ、どう見てもそっくりな勝仁と信幸が実は義理の親子だったりするからなあ。
　ここで美欄がドックの責任者として登場したのは、きっと娘を迎えに来るための仮の姿に違いない。
　あと、アカデミーの校長が九羅蜜美守……。ギャラクシーポリスは、九羅蜜家がかなり勢力を保っている場所なんですな。

　入国管理官の正木霧恋との再会。
　ＧＰの輸送船で先に出発していたはずの西南より、霧恋のほうが先に銀河アカデミーに到着していたのはどうしてという疑問がかすめたが、まあ、海賊の襲撃やら、瀬戸さまとの体面やら、リョーコ・バルタとの接触やらいろいろ道草を食っていたから、その間に追い越してしまったのでしょう。
　そして雨音・カウナックとの再会。
　どう見てもショタの気があり、西南とも幼なじみである霧恋が西南に好意を示すのは分かります。しかし雨音さん、あなたは西南くんのどこがいいのでしょうか？
　シャトルの着船事故に巻き込んでしまい、人工呼吸で助けて、更にその場のノリで西南をＧＰに誘った。どう見てもそれだけの無関係に近い関係なのに、まるで恋人を待ち焦がれて駆け付けた乙女のような登場シーン(笑)。
　前回、瀬戸様は雨音に、「マザコン坊ちゃん」「高慢ちきな金持ち」「男友達タイプ」の男と見合いを仕組んだと言っていましたが、なるほど失敗するはずですな。実はショタコンだったとは。

　銀河アカデミー理事長の柾木アイリは「真・天地無用！」に出てきたアイリ・マグナその人ですね。そうかあ、正式に籍に入っていたのか。
　この人は、理事長のくせに自分から道案内を買ってでるわ、すぐに説明を始めるわで、「機動戦艦ナデシコ」のイネス・フレサンジュを連想してしまいました。
　アイリが水穂の母親だということは知っていたのですが、天地の母方のお祖母さんでもあったとは。これは始めて判明した事実ですな。「お祖母さん」というと怒りだすけれど、不老長寿技術の発達して歳の差がほとんど関係なくなっている宇宙では、子供がある程度成長して独立したらそれなりに対等に扱うことになっているのかもしれない。

　アイリの天地家系図についてはツッコミどころが多いですな。
　ここでは天地の母親の名前が「清音」になっていましたよね。実はＯＶＡ版の天地無用では、天地の母親の名前は当初から清音だったそうです。
　（天地の母親の名前として一般に通じている「阿知花」は、「清音」を美星の相棒として使ってしまった長谷川菜穂子が、新たに母親として梶島正樹に付けてもらった名前らしい。ＯＶＡ本編では使われていない設定である）
　清音が正式に天地の母親であるということがメディアに判明したのは、これが始めてじゃなかったのでしょうか？
　あと、信幸が遥照の遠い子孫であるという設定も明らかになりましたね。これは「解体真書」で明かされた設定でしたけど。

　獣人型宇宙人エルマ登場。
　エルマの香水が西南にとって覚えのあるものだということだけど、これは……西南の女性関係で少しでも心当たりがあるのは……まさかリョーコ・バルタ！？
　無理があるのは百も承知なんだが……でもそれ以外のキャラには心当たりがないんですよね。
　いや、そこにはきっと未だ明らかにされていない深遠な裏設定があるに違いない！！（思い込み）

　そしてついに登場、勘違い野郎の天南静竜。
　アイリ曰く、地球で天地ちゃんに決闘で負けて地球人嫌いを宣言するようになってからとかいうことらしいですがちょっと待て。
　静竜が負けたのは、実際には天地ではなくて美星だったはずだぞ。
　まあ、ギャラクシーポリスの長官や銀河アカデミーの校長の孫娘を毛嫌いするわけにもいかないだろうから、全ての恨みが地球人に向かったということなんだろうが。
　ＯＶＡ１３巻の頃から愉快なキャラクターだったけど、よりいっそう○○に磨きをかけていたわけですな。

　最後に西南のルームメイトのケネスとラジャウですが。
　彼らはちょっと個性に乏しすぎるきらいがありますね。他のキャラクターの個性が強烈すぎるという理由もあるだろうけど。
　西南が真面目一辺倒の正確なだけに、片方だけでももう少し不良がかった性格でも良かったのではないかとも思います。二人ともいい人というかいい宇宙人過ぎてかえって印象に残っていない……
　もっとも、西南の不運というか不幸に一番巻き込まれる役なのですが。

　今回は繋ぎと紹介の回だけにこんなもの。次回を楽しみにします。
　

初出：02/ 4/27 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx1.htm#4

おのれ、巨人−広島戦。