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　いやー、ついに出ましたね、「真・天地無用！魎皇鬼」
　私は２１日の会社帰りに買っちゃいましたよ。

　で、読んでみて素直に思ったこと、「面白い！」
　JR桜島駅さん（補注：Ｎｉｆｔｙのメンバー）じゃありませんけど、天地系の作品で素直に面白いと言えるのは、ホント久しぶりという気がします。サミーは除くけど。
　うんうん、天地ってこんなノリだったよね、ってな感じですね。阿主沙の冒険劇をメインに、背景にあるのは陰湿な宮廷陰謀劇だったり少年の純愛だったりするわけですが、青年阿主沙を始めとする樹雷皇家の連中の豪快で陽気な気質が快刀乱麻を断つがごとき爽快感を出していて、それでいてひれねくれた部分が本編とあい通じる部分があるんですよ。
　ね、瀬戸さま(^_^)

　読んでて思ったのは、この話はそれこそ４つか５つの短編を１つにまとめたってのが良く分かるってことですね。樹雷編には１６のエピソードがあるとか書いてあったけど、これはそのうちの４つから５つのエピソードを一つにまとめたって感じがヒヤシンス。
　少年阿主沙の幼いながらもまっすぐで直情的な感情が、青年阿主沙の豪快な気質が、心地好いテンポとなっていて読んでて爽快感を感じさせてくれるんですよ。瀬戸さまのひねくれた態度やものいいとか、観月さまのはかなげさや切なさが、背景に彩りを与えてくれてるよ、これ。

　しかし、後書きにも書いてあるように、これはもう女性上位の世界ですわ、こりゃ。一見すると男が支配している世界のように見えますが、その背後ではわがままな男どもを女たちが影になったり日向になったりして支えていると。予想とは違って阿主沙は母親とは生き別れになっているけど（現代では死んでるかも）、そのかわり神木瀬戸が母親代わりにからかってるわけだし、観月を心の置くに忍ばせているわけだし。
　やっぱり人類、みなマザコンってなところですね。


　そりゃ、この小説にだって欠点がないわけじゃない。
　まず、この小説はＯＶＡ版天地無用！魎皇鬼を全１３巻見ていることというのが前提条件になっているということ。明らかに、天地無用！を読者が知っているという前提のもとで話が進んでいるところがある。しかしこれはそもそも、ＯＶＡ版天地の世界をもっと知りたいという読者を対象にしているわけですから。つまり後書きにもあるとおり、商品展開としては「天地無用！解体真書２」ってな部分が多大にあるわけですね。これはこれでよいと思いますです、ハイ。

　それからところどころプロットかってな感じがしましたね。もっと話が膨らませられるような部分で「あれ、これだけ？」ってな展開がところどころ見受けられたっす。まあ、この小説は天地世界の歴史小説でもあるわけで、しかも伝記物ではなく歴史そのままと言われる部類のものですから、その意味では正解かもね。しかし、阿主沙と神我人・魎呼の戦いとか、海賊達との戦いはもう少し盛り上げられたのではとか思ったりなんかしちゃったわけで。そこらへん、読んでてちょっと欲求不満を感じましたね。

　あと、舟参が黒幕となった宮廷陰謀劇は悲惨の一言（舟参が）。そもそも陰謀劇っていうのは、黒幕がチェスでも行うように一手一手追い詰められて八方塞がりになった主人公側が、そこでウルトラＣの逆転手を打つことで状況をひっくり返すってところに醍醐味があるんですよね。観月の件ではまだ瀬戸が逆転劇を行ったのに対し（舟参が自爆した部分が無きにしも非ずだが）、船穂の件では皇家の樹が勝手に解決しちゃってまあ。
　しかし樹雷の統治システムがこのような構造になっている以上、樹雷皇とは皇家の樹の代弁者でもあるっちゅうわけやね。それを無視して自分が樹雷皇に、あるいは息子を樹雷皇にたてて自分が関白になろうとしても、樹に認められてナンボってなところなんですね。つまり舟参はどこまでいってもお釈迦さまの掌の上の孫悟空で、陰謀劇の悪役としては三流以下な役どころや。
　もう少し自分の器量を自覚しろや、舟参。

　それにしても阿主沙も悲惨。樹雷四皇家で勢力最弱の柾木家から、第１世代の樹、船穂に認められた遥照、第２世代の樹、龍皇に認められた阿重霞とか、始祖の樹、津名魅に認められた砂沙美と次々に有力者が生まれてきて基盤が磐石になりつつあったのに、全員に出奔されることになるわけですから。


　だけど、この本だけでも天地ＯＶＡでの謎が幾つか解けましたね。
　神我人がなぜ皇家の樹の存在を知ったとか、再生も効かないとはどういうことだとか、どうしても瞬間移動したとしか思えない美砂樹さまの特殊能力は何かとか、そういう直接的なことはもちろんの事、ちょっと想像を働かせれば、なぜ遥照が地球から帰らないのかとか、天地が樹雷の枠組みからも少し外れた存在であるとか、そういう部分がいろいろ見えてきますね。
　例えば、事故とはいえ船穂が地球に根付いてしまった以上、それは遥照が皇家を捨てたということとほぼ同義であり、それも樹雷に帰らない一つの理由になっている部分があると推測できるわけです。遥照が自分の代わりに天地を樹雷皇にと思ったのも、自分ではもう皇家に帰還できない、例え帰れたとしても次期樹雷皇にはなれないことを悟ったからとも考えるわけです。
　しっかし読み返してみて思ったのは、天地は樹雷皇家の皇子ではあっても、四代続けて皇家の外から配偶者を娶った者の子孫なわけなんですね。つまり本来なら傍流もいいところで、普通こんなんは樹雷皇家側は認められないはずなんですわ。それが樹雷を越えた力を持っているわけで、なんでどーしてという謎になるわけです。

　これはもう続巻以降を待つしかない。松しか無いから松竹梅ってなわけで、評価としてはまず上々ですね。


　しかし、ＲＴで白瀬さんたち（補注：Ｎｉｆｔｙのメンバー）と話してたんだけど、樹雷皇家が美男美女ばかりなのは十数万年にも渡る皇家の樹の淘汰があるのでわと(^_^;)　つまり美男子、美少女でないと樹が認めてくれないからかなー（←半分マジ）。
　あと十数万年に渡る生体強化で、樹雷皇家って異能者が増えつづけてないかいとか、そういう愚問もあるわけで。ま、美砂樹４歳がかわいかったからそれでオッケーです。

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