９８年春のアニメの感想(1)

　今春放映していたアニメの４月２日時点における、私の独断と偏見による評価です。★５つで満点です。

万能文化猫娘（テレビ東京系　毎週水曜夜６時、３月２５日放映終了）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　木星より巨大な小惑星の接近・衝突で、地球は崩壊の危機に見舞われる。対消滅ミサイルで小惑星を破壊しようとするミシマインダストリィだが、全弾不発。そこでミスターＱが立ち上がり、唯一残ったミサイルに最後の希望をたくす。みんなの協力を得て改修したミサイルだが、発射にはヌクヌクの犠牲が必要だった……。
　壊れたギャグといい意味で破綻したストーリーにより、最後まで楽しめたナンセンスコメディの良作である。余談だが脚本家の中には新・天地で不評を買った回を担当した者もおり、作品が違うとこうまで出気が違うのかと驚いた覚えがある。作品とアニメーターの資質の相性というものを考えさせられた。

吸血姫美夕（テレビ東京系　毎週月曜曜深夜１時１５分、３月３０日放映終了）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　冷羽との対決を退けた美夕だが、はぐれ神魔・鳥の一族の陰謀により、最強の神魔と対決することになる。神魔として覚醒した千里に、美夕の力は通じない。そして千里は、美夕の心のトラウマを暴き立てていくのだった。
　最終回が観念的なストーリーになるのは最近のはやりなのか、美夕もまた同じパターンをたどった。しかし全編を通して緊迫感があふれており、本当の意味では救われない美夕の宿命を描いたのは良かったと思う。

マスターモスキートン’９９（テレビ東京系　毎週火曜夜６時、３月３１日放映終了）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　紆余曲折の末、ついにＯパーツを手に入れたイナホとモスキートンは、ヒトメボレ家の血筋に秘められた宿命を知る（思い出す）。復活したサンジェルマンの攻撃を受けた時、イナホはＯパーツと同化してサンジェルマンを退け、究極の力を手に入れた。しかしながら煮えきらないモスキートンにイナホが暴走、サンジェルマンと手を組んで世界征服に乗り出してしまう。
　サンジェルマンとの最後の戦いはあまり盛り上がらなかったように思うが、エンターテインメントのお約束でまとめていて良し。Ｏパーツをめぐる冒険が終わっても、金の亡者イナホとモスキートンの冒険はまだまだ終わりそうにない。あれだけのことをしでかしても元の鞘に戻っているのことからも、良くも悪くもモスキートンはあかほり作品である。

ＡＷＯＬ（テレビ東京系　毎週水曜深夜１時４５分、４月１日放映終了）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　ピート・ギルテンの拘束のためにソロモンの本拠地に乗り込むハイアット部隊。侵入を許したソロモンはあと３時間で地球を攻撃すると宣言する。任務は困難をきわめ一時はメンバーが捕まるが、ハイアットの機転により任務は無事終了し、任務は無事完了する。
　終盤になると話が見えてきたが、その分序盤の混乱が残念である。まず３話を１話２話の前に持ってくるべきだったと思う。キャラクターも、統幕議長や補佐官という上層部の連中は描きこまれているが、ステロタイプの域をでていない。この手のキャラはこの話では無能と相場が決まっているので、ハイアット部隊の視点の描写に力を入れるべきではなかったのだろうか。

るろうに剣心─明治剣客浪漫譚─（フジテレビ系　毎週火曜夜７時３０分、放映中）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　島原で天草翔悟を倒しキリシタンの反乱を抑えた剣心たちは、帰郷の道中にもちょっとした事件に巻き込まれる。やっと東京に帰った剣心たちの前に現れたのは、勝海舟が持っているの徳川の隠し財産をめぐる争いだった。
　島原編の決着の付け方にはやや不満が残る。るろ剣の対決シーンの真骨頂は精神論と同時に剣の技術論の戦いでもあるはずなのに、翔悟との戦いは精神論だけに終始してしまった。屁理屈でもいいからなぜ剣心が勝ったのかとか、雷龍閃の解説など技術的なアプローチもして欲しかった。

Ｄｒ．ＳＬＵＭＰ（フジテレビ系　毎週水曜夜７時、放映中）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　ペンギン村では相変わらずアラレたちの巻き起こす騒動が耐えない。はた迷惑な自称・英雄スッパマンや地球侵略しにきてそのまま住み着いたニコちゃん大王、世界征服の野望に燃えるＤｒ．マシリトの登場により騒動は絶えることがなかった。
　前作と比較するとアドリブ的暴走を抑えた作りになっている。暴走を抑えることで今風の作り込んだギャグアニメを作ろうというのだろう。それも正解だと思うが原作や前作を知っている身とすれば採点を辛くせざるを得ない。レタスを用いた原画取り込みＣＧは、安易に拡大縮小に用いるとブロックノイズが発生する弱点があるので、少々気になっている。

星方武侠アウトロースター（テレビ東京系　毎週木曜深夜１時４５分、放映中）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　ケイの海賊にアウトロースター号を狙われ、惑星センチネルIIIにいられなくなったジーンたちは、暗殺者で賞金稼ぎの“黄昏の鈴鹿”を仲間に引き入れて惑星ヘイフォンに向かう。ヘイフォンの宇宙レースで仇敵マクドゥーガル兄弟の宇宙船を見つけたジーンは、マクドゥーガル弟のハリーと接触、決闘に挑むことになる。
　相変わらず質の高いＳＦアニメを提供してくれている。話も１クール経ったのにダレが見えてこないのはすばらしい。猫娘エイシャと黄昏の鈴鹿の登場でメインキャラがそろったが、彼女たちもまたキャラが立っている。あとは宿敵となるマクドゥーガル兄弟の描写次第だろう。見逃すと損だがテレ東の深夜枠は時間帯移動がよくあるため、見逃してしまった回があるのがくやしい作品である。

烈火の炎（フジテレビ系　毎週土曜夜６時３０分、放映中）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　　暗黒裏武闘殺陣予選の１回戦は空、２回戦は麗（幻）、３回戦は麗（音）との戦いであった。紅麗の陰謀により小金井も参戦する。それぞれの対戦相手の事情や主催者の森紅蘭の陰謀を承知したうえで、烈火はみんなを助けるために戦うと宣言して戦いに挑む。強敵に立ち向かうたびに烈火は、八竜の力を手に入れるのだ。
　原作の違いからか、哲学ものに走ってしまった（そして最後で破綻した）幽遊白書と違い、烈火の炎はあくまでヒーローものの範疇にとどまっている。水鏡との仲間割れや決して一枚岩でない敵との試合内容も、ヒーローもののパターンを踏襲している。原作者の資質の違いによるものだろうが、この調子ならこれからも哲学ものに走ることはないだろう。

初出：'98/04/03 http://www.3web.ne.jp/~junhelm/talk/anime_03.htm