９９年夏のアニメの感想(2)

　今春放映していたアニメの、７月５日時点における、私の独断と偏見による評価です。
　ここでの採点は私の独断に基づき、以下の基準で評価をしています。

	特に気に入っている
	とりあえず文句はない
	まず合格点には達している
	見ていて不満を感じる
	評価に値しない

下級生（ＮＨＫ教育　毎週月曜深夜２４時、７月５日放映開始）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　
　高校三年の山口剛は女友達の多いことで学校ではちょっと名前の知られた有名人。ニ年の南里愛は男性恐怖症気味で内気な少女だが、ある朝の登校時、剛と出会った事で憧れに近い感情を抱きはじめた。美雪はそんな友達の愛を応援しようとするが、その性格からか二人の関係は遅々として進まないのだった。
　パソコン版美少女恋愛ゲームのアニメ化であるが、アニメの恋愛ものとしては、基本に忠実でオーソドックスな作品である。主人公の剛がちょっぴりスケベでお調子者なところといい、メインヒロインの南里愛が剛に一目惚れするところといい、その他にも剛には悪友の稔やライバルの男（名前忘れた）や眼鏡君、愛には親友の少女である美雪など、まんま８０年代のラブコメの王道を行くキャラクター配置がそれを示してくれている。ただオーソドックス過ぎてそれ以上の作品性が期待できないのが辛いところかもしれない。前番組の「To Heart」が同じ美少女ゲームのアニメ化というジャンルでありながら脱アニメ文法の作品作りで一定の成功を修めただけに、それと比較してしまうのはこの作品にとって辛い部分だろうか。
　さて「下級生」には謎のアイドルグループ、あっぷ^２が関っている。エンディングを歌うだけならまだしもそのエンディングをあっぷ^２のプロモーションビデオにしたり、エンディング後にスタッフインタビューをあっぷ^２がおこなったりしている。おそらくタイアップ活動の一環だと思うが、もしこれが「下級生」人気を目当てにした人気活動の一環だとしたら止めてくれと言いたい。ゲームファンとアニメファンは確かに重なる部分が多いが、「下級生」のファンがアイドルのファン層と重なっているとは到底思えないからだ。おそらくＣＭ枠を買い取ってやっている事でアニメ制作とは関係ないだろうが、ＴＶを見る側にとってはそれらを含めて一つの作品となる。アニメで愛たちヒロインが動くところを見たいファンが、オマケとはいえ実写の新人アイドルグループを見てみたいとは思えない。その辺を考慮してプロモーションして欲しかった。

宇宙海賊ミトの大冒険　２人の女王様（テレビ東京系　毎週日曜朝９時３０分、放映中）
　　絵　　　　　　　キャラ　　　　　ストーリー　
　女になったまま戻れず銀河星王家１２６０代目の女王に就任した光圀葵。そのまま高校に進学するも、女王の激務があったり、天野原町が銀河の首都になったりして騒ぎが耐えない。そのために婚約者の年賀睦月との関係が少しギクシャクし始めた。そんな中銀河星王家初代女王陽怒（の亡霊）が復活し、銀河の正統を巡って葵たちに襲いかかって来た。陽怒復活を予測していたミトは海賊たちをまとめあげて戦力とするも、陽怒は睦月をさらって葵に宣戦布告をしてきた。
　前作が親子の関係の破壊と再構築をメインテーマに据えており、母親の虚像と実像のギャップに悩む葵と息子に自分を認めさせたいミトとのドタバタが中心に据えられていて楽しかった。それに比較すると最初からキャラクター間の関係が固まっていて、母親が宇宙人である事も女の子になってしまった事も女王に就任した事も葵がある程度受け入れてしまっている今作がややパワーダウンしている印象を受けるのは無理の無い事かもしれない。前作からわずか３ヶ月で放映された第２シリーズだけに、その分のフォローに回すだけのパワーが無かったのだろう。
　しかし話の展開は相変わらず丁寧で、キャラクターの感情の流れが実に自然である。葵を守り切れなかった睦月が青いとの関係に齟齬をきたし、それをお互い打ち明ける事で解消して一皮剥けようと努力するなど、修羅場の展開を安易なお約束に頼らない話作りは好感が持てる。もちろん瀬我と天堂が女の子版葵にムンムンしたり、カミングアウトした華風子が葵にアタックしたりなど、楽しいお約束も決して忘れてはいない。前作と同じく傑作となる予感を秘めていると言える。

初出：'99/08/12 http://www.3web.ne.jp/~junhelm/consider2/anime_15.htm