葉鍵板最萌トーナメント２回戦Round101!!

214 名前：名無子投稿日：02/01/19 22:12 ID:/h45htS/

＜すばると彩＞　その１

「ぱぎゅ〜！？」
「どうした、すばる」
　千堂和樹が御影すばるとユニットを組んではや１年。その発音のニュアンスだけで和樹はすばるが何を言いたいのかが大体分かるようになってきた。
「うーん。最近、どうも話し作りがマンネリですの」
「どれどれ……。いや、随分おもしろいと思うけどな、俺は」
　はじめてこみパに参加した当時、すばるはマンガの書き方のイロハも知らないド素人だった。和樹は見るに見かねてユニットを組んだのだが、今のすばるの人気と実力はこみパの中でも１、２を争うものである。
「それは、詠美さんや由宇さんにいろいろ教えてもらったからですわ」
　マンガ音痴だったすばるにマンガのイロハを教えたのは、猪名川由宇と大庭詠美だった。由宇はオタク知識とマンガ作りのノウハウを、詠美は売れる話の組み立て方を徹底的にすばるに叩き込んだのである。
　今でもすばるは、一日１０本の映画鑑賞とペンスケッチを欠かさない。それは由宇の教育指導のたまものである。
「確かに自分でも売れるとは思うんですけれど、どうも面白いとは思えませんの」
「それって、話に魂が入っていないということか？」
「そうそう、それですの」
　由宇が詠美を紹介したとき、詠美の持つ技術を悪魔のテクニックと称したことがある。
　読んでいる者の感情を自在に操るストーリーテーリング。その代わり詠美のマンガは教科書どおりの意外性のないマンガとなりその魂を堕してしまったという。
　由宇は、すばるならその罠に嵌まることはないと詠美を紹介したのである。しごきと称してよい由宇の指導についてこれたすばるの根性を買ったのだ。
「でもどこが悪いのか、よく分からなくて」
「うーん確かに。でも俺も具体的にはどうしたらよいのか……」
　その時、和樹の頭に一人の少女が浮かんだ。彼女なら今のすばるの悩みに答えられるかもしれない。

215 名前：名無子投稿日：02/01/19 22:12 ID:/h45htS/

＜すばると彩＞　その２

「というわけだ、彩ちゃん。すばるの作品を見て、どう思うか忌憚なき意見を聞かせてくれないかな」
　和樹が紹介したのは、長谷部彩だった。
　コピー本が中心で毎回数部づつしか売れない零細サークルの主宰ではあるが、和樹は彩の天賦と称してよいストーリーテーリングの才能を買っていた。
「……とても、面白いです。売れると思います」
「ぱぎゅう。でもどことなくマンネリのように思えますの」
「とすばるは言ってるんだ。気付いたことがあったらどんな些細なことでも良いから教えてくれないかな」
「それじゃあ……」
　わたしはパロディの元ネタとなっている『クルーガー』はよく知りませんが、と前置きした上で、彩は指摘を始めた。
　いわく、原作を知らない者が見ると、キャラがどうしてこういう反応を返すかが分からない。作品のもつ約束ごとに囚われすぎて、説明不足の勘が否めないというのだ。
　また原作を知っているものの立場から見れば、このパロディは原作のお約束ごとに基づきすぎている。キャラクターを再解釈して、自分なりのキャラクター像を示すのがパロディ同人誌の醍醐味ではないのか。
「でもでも、クルーガーは正義の味方ですの。これは正しいヒーロー像を描いたものですの」
「……すばるさんは、クルーガーに対する思い入れが強すぎるように思えます。こうあらねばならないというキャラクター像に縛られすぎているのでは」
「ばきゅう〜」
「今のすばるさんには、原作物ではなくオリジナルのマンガを書いてみた方がよろしいのではないでしょうか」
「え！？」
「ぱぎゅ！？」

　その次のこみパから、すばると彩がユニットを組むことになった。
　彩の指導を受けてすばるが描いたオリジナルの創作同人誌は飛ぶように売れ、釣られるように彩の同人誌も徐々に再評価されるようになったという。