葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round138!!
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葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round138!!
- 767 名前：名無子投稿日：02/02/16 16:18 ID:r+bo9QYC
- ＜カードマスター瑞希＞ その１
大学の講義が終わった後、あたしは学舎裏で待ち合わせをしていた。
これで相手が恋人とかいうんだったら良かったろうけど、あいにくあたしの待ち合わせ相手はそんなロマンチックな相手じゃないんだよね。
「待たせたな、まいしすたー」
「遅いわよ、大志」
待ち合わせ時刻に１０分遅れて、大志がやって来た。
「いや、すまんすまん。何しろ急な用事だったもんでな、何かと準備に手間取ってしまったのだよ」
「……ま、あんたに一般常識なんてものは期待してないけどさ、やっぱりもう少しマナーというものを身につけて欲しいわよ」
「何を言う、吾輩はマナーにはうるさいほうだぞ。こみパでも徹夜はしないし、大手サークルの新刊本もきちんと並んで買うほどだ」
こいつの常識って、あっち方面に偏ってるのよね。
「はいはい。それで、アレは持ってきてくれたの」
「もちろんだとも、まいしすたー。例のブツはちゃんとダビングしてあげたぞ。心ゆくまで堪能してこい」
そういうと、大志は抱えていた紙袋をあたしに手渡してくれた。
……って、なによ、この量は？
「ふふふ、よもやまいしすたーがこれに興味を持つ日がこようとはな。吾輩の目に狂いは無かったということだ」
「ち、違うわよ」
「くくく、照れなくともよい、まいしすたー。いままで嫌っていたふりをしてたから、素直になれぬのも無理はないがな」
「そんなんじゃないってば。それより何よ、この量は？ ちょっと重いわよ」
「まいしすたーの開眼記念だ。単行本にアニメ雑誌、トレーディング・カードにぬいぐるみグッズなどもいろいろ取りそろえておいた。なに、心配するな。代金はいらん。」
こうして、あたしは大志にいろいろ押し付けられてしまった。
まったくもう、あたしが頼んどいたのはアニメのダビングだけだったのに。
- 768 名前：名無子投稿日：02/02/16 16:18 ID:r+bo9QYC
- ＜カードマスター瑞希＞ その２
『へもへも、どうしよう。千春ちゃんが化け物にさらわれちゃったよ』
『よし、ピーチ。いますぐあいつを追っかけるんや』
『うん、千春ちゃんを助けるんだね』
『そして最大魔法で、あの化け物をぶっ飛ばす！』
『ちょ、ちょっと。そんなことしたら、千春ちゃんまでふっ飛んじゃうよ』
『何びびっとるんや！ 正義のためには、多少の犠牲はつきものに決まっとるやろ。なに、心配することあらへん。モモと千春との友情に、またほんのちょっとヒビが入るだけや』
『ふえ〜ん、あたしってば、不幸〜〜〜』
休日を利用して、あたしはアニメを鑑賞していた。
今、話題のアニメ「カードマスターピーチ」だ。大志に頼んで、ダビングさせてもらったものだ。
こうして見てみると意外と面白い。和樹がアニメやマンガにはまるのも、今なら少し分かる気がする。
そう、あたしは和樹のことを全然バカにしていた。
しかしこの間の夏こみで、和樹のマンガは評判となってたくさん売れた。大手マンガ雑誌の編集長に直々に声をかけてもらったんだ。
たかがマンガの世界だと思ってたけど、これがいかに凄いことかはあたしにだって分かる。
仮病まで使って和樹にマンガを止めさせようとしたあたしがバカみたいだ。
だから、和樹の応援をすることに決めた。
応援するからには、それなりのことをしなければならない。
しかしあたしは、マンガやアニメのことなんて全然わからない。だから大志に、今いちばん和樹がはまっているアニメをダビングさせてくれるように頼んどいた。
最初はなんでこんな少女ものを喜んでみているのか分からなかったけど、見てみると結構面白かった。
非業の運命をたどるモモの、愛と悲しみと正義と友情の物語だ。大志が言うように、アニメ鑑賞にティッシュが欠かせない。
あたしは、「ピーチ」にのめり込んでしまった。
- 769 名前：名無子投稿日：02/02/16 16:19 ID:r+bo9QYC
- ＜カードマスター瑞希＞ その３
９月こみパ当日──
「ええ、もうこみパ当日なの！？」
徹夜で「ピーチ」のアニメを鑑賞していたあたしは、すっとんきょうな声を上げていた。
「どうしよう、今日はコスプレしていくつもりだったのに……」
そうだ。和樹のやっている世界を少しでも分かりたくて、あたしは今日はコスプレ衣装を制作していくつもりだった。そのために大志にダビングまでしてもらったのに。
まさか、アニメにあそこまではまるとは思わなかった。
衣装の細かい確認をしようとアニメを再生するたびに、そのまま見入ってしまったのだ。
あげくの果てに大志が抱き合わせでくれた単行本やトレーディング・カードにまで見入ってしまった。
うう、せっかくコスプレ衣装は作ったのに、今からじゃこみパ入場に間に合わない。せっかく和樹がサークル入場券くれたのに。
「困っているようやな、瑞希」
……って、だれ。このへもへもライクな声は。
「ここやここ。わいのこと忘れたんかいな」
振り向くとそれは大志が渡した紙袋の中に有る……って……
「ぬいぐるみがしゃべってる！？」
「なんや、すっとんきょうな声をあげてからに。わいがしゃべるのがそんなに珍しいんか」
「な、ななな、ど、どどどどうしてぬいぐるみが。こ、これってもしかして、徹夜開けでハイになってるとか？」
「ちゃうわ。そんなことより、はやくせんとこみパに間に合わないんと違うか」
……まあ、大志が買ってきたぬいぐるみだから、しゃべるくらいあるかもしれないわよね。
「そ、そうだった。早く行かないと」
「まあまて、瑞希。そんなときのための魔法や」
慌てて出かけようとするあたしを、へもへもが止めた。
「さあ、この魔法のステッキで呪文を唱えるんや！」
「それって、あたしがデパートのおもちゃ売り場で、４９８０円で買ってきたもの……」
妹へのプレゼントと称して買ってきたんだけど、すっごく恥ずかしかったんだから。
へもへもの強引な押しに、しかたなしに、あたしは魔法のステッキを振り回して、アニメで覚えた呪文を唱える。
「えーと、『らーめんたんめ……』。ダメ、やっぱり恥ずかしい！！」
「えーかげんにせんかい！」
- 770 名前：名無子投稿日：02/02/16 16:19 ID:r+bo9QYC
- ＜カードマスター瑞希＞ その４
「らーめんたんめんたんたんめん、れーめんにゅうめんひやそーめん」
アニメを見て振り付けを練習し、今や目をつぶってでも言えるようになった魔法の呪文を唱えると、あたしの衣装がみるみるうちに変わっていった。
ふええええん、どうしてアニメの魔法の変身って、一度は服装が裸になるの。
モモちゃんの切実な気持ちが、今本当に理解できたような気がした。
「見事や、瑞希。カードマスターピーチの誕生や」
みると、あたしの服装は、カードマスター・ピーチの衣装と化していた。……って、それってあたしが製作していたコスプレ衣装じゃないの。
「どういうことなの！？」
「瑞希、おまえは今から選ばれた正義の味方として、オタクの平和を守るために働くんや」
「……って、どうしてあたしがそんなことしなくちゃいけないわけ！？」
「それがお前の運命だからや！」
あ、頭いたい。
どうしてあたしのまわりには、こういうろくでもない奴しかいないのかしら。
「さあ、ピーチ。はよ池袋にいかないと、こみパに間に合わへんで」
「……って、こんな格好で行かせるつもり！？」
ピーチの衣装って、ふりふりがすごくて、こんな格好で電車には恥ずかしくて乗れないじゃない。
「心配するな、第一電車では間に合わへんやろ。さあ、ＦＬＹのカードを使え」
そう言って取り出したのは……それも大志の買ってきたトレーディング・カードじゃないの。あいつ、こうなることを予期してたんじゃない？
こうして、あたしはへもへもにどやされるように、空を飛んで池袋に向かった。
空を飛べるのがちょっぴり気持ちよかったなんて、あまり言えないけどね。
http://cgi.tky.3web.ne.jp/~junhelm/img-box/img20020216161719.jpg
- 771 名前：名無子投稿日：02/02/16 16:19 ID:r+bo9QYC
- ＜カードマスター瑞希＞ その５
ピーチの魔法のおかげでなんとかこみパ入場には間に合った。
もう夕刻だったけど。
やはりピーチの衣装じゃ恥ずかしかったから、変身は解いたけど。そうしたらもとのコスプレ衣装に戻ってしまった。生意気なへもへももぬいぐるみに戻ったみたい。
でもやはり和樹の前にはなかなか出られなかった。
思い切って和樹の前に表れたら、成り行きでコスプレすることになったし。
あたしはやはりしぶったけど、玲子ちゃんを紹介されて、コスプレ衣装に着替えさせられることになった。
魔法の呪文で着替えるわけにはいかなかったしね。
あたしの格好を見て、和樹はむっつりしてしまった。やはり大の大人がこんな子供のコスプレなんてしてるからとおもったけど、和樹のやつ、真っ赤になって。
「す、すげえ、似あってるぜ」
って言ってくれた。さすがに嬉しかったな。
苦労した甲斐があったんだぞ。
「悪かったな、おたくにしちまって」
て和樹は謝ってたけど、あたしも一度はこういう世界を楽しんでみたかったんだって分かった。
結局、あたしは和樹がマンガやアニメに夢中になっているのがうらやましかったんじゃないかなって。
大学に入ってから夢中になったものなんて無かったしね。
だからもしこみパに遅れてたら、きっと悔いが残ったかと思う。
もう普通のぬいぐるみとおもちゃのステッキに戻ったけど、今回だけは、ピーチとへもへもに感謝だよね。
「これからもよろしくなや、瑞希」
……へ！？ 今の声って……。