天地無用！ＧＸＰ：アンラッキーな感想

　リョーコ「逸話には事欠きませんのね」
　雨音「素養は生まれた時からあったというわけだ」

　生まれた時から不幸といえば、うる星やつらの諸星あたる。天地の源流はやはりうる星？

　今回は帰省編その１。クライマックスに向けて一息つけたということでしょうか。
　感想の書き方をちょっと変えてみました。

・タラントとの決着
　タラントは西南が初めて遭遇した試練であり、その洗礼はしばらく西南にとってもトラウマになるほどでした。タラントにしても油断から西南にナイフを突きつけられたという苦い重い出があり、両者ともに因縁があります。
　ですので西南はいつかはタラントを乗り越えねばならないはずだったのですが……
　当時、一介の研修生だった西南は、いまも研修中だったとはいえ囮船の艦長であり、しかもその船は樹雷の船にも匹敵する魎皇鬼型の戦艦。タラントの乗船ダイダロスと比較すれば、戦力差も性能差も歴然としていたりする。
　だからあっさりやられてしまった。タラントってやっぱり三流だったのね。
　これは物語的にはそんな戦艦を西南に与えた瀬戸さまと、それを一介の研修艦長にそれを認めているアイリ理事長の責任でしょう。西南というおもちゃを気に入ったから手放したくないという女性陣のワガママによる過保護が、西南にダイダロスなど比較にならない力を与えることで、西南の試練への克服の機会を奪ったといえなくもない。 　同じことは第１２話の守蛇怪大破でも言える。この回の陰謀の首謀者もタラントだった（と思う）が、そのタラントとの勝負でもいよいよとなったら魎皇鬼が出てきた。タラントの罠に嵌められたリョーコ・バルタが西南を救出に来るのは構わないが、この時点では西南にもタラントにも関係ない魎皇鬼が来るというのは、西南のタラントとの決着を奪ったともいえる。
　このように、西南はタラントとの決着の機会を奪われつづけた挙げ句、最後には圧倒的な火力で危機に陥ることなくタラントを撃破してしまった。これでは西南の成長の機会にもならないし、タラントも納得できないだろう。
　もっともこれは、梶島版天地無用！が抱える構造的な宿命とも言えるんですけどね。

・久々のケネスとラジャウ
　初期文明地域である地球の監視員をしているケネスとラジャウ。
　普通の才覚しか持たない研修生なら、この程度の職場に回されるという見本でしょう。

・ＮＢの恋
　覗きやインターネットで色っぽいねーちゃんを求めていた愛の狩人、ＮＢにもついに春が！
　しかしその相手が喜子ちゃんとは……。今までの女性と全然違うやんか！
　まあ、男子にとって浮気と本気は全然別物ですから──ということにしとこう。

・仕送りだけで豪邸が
　西南が帰ってきたわが家は、いつの間にか御殿になっていた。
　西南の預金の利息分だけで屋敷が建ったらしいが、ここでの疑問点は３つ。

　　　(1) 西南のＧＰにおける、艦隊司令官なみという評価は適切か
　　　(2) 利息分だけで豪邸が経つほどの西南の給料は多過ぎやしないか
　　　(3) 山田家は税務署に西南の仕送りをどうやって説明しているのか

　(3)はとりあえず置いとくとして(笑)、(1)は私は適切な評価だと思っています。
　西南の本来の立場は研修生です。軍隊の階級に例えるならいわゆるキャリア学生ということで准尉あたりが適切でしょう（配卒されれば少尉となり、キャリアとしてエリート街道を進みはじめます）。
　しかしながら囮船の艦長をも務めており、しかも実戦で実績をあげています。初代守蛇怪は駆逐艦あるいは巡洋艦クラスの船だから、これだけで少佐あるいは中佐クラスでしょう。しかも現在の守蛇怪の戦闘力は樹雷の戦艦なみですから、これで大佐クラスの扱いになる。
　しかも西南の実績は、たった一隻で海賊の艦隊を一網打尽にしてしまうほどの効率の良さ。つまり海賊とはいえ艦隊と互角に戦えるということで艦隊司令官なみ、階級にして将官クラスという評価は極めて妥当なものとなるのです。
　軍隊で将官クラスといえば、もう雲の上クラス。会社で言えば専務取締役扱いでしょう。
　しかしいくら将官クラスとはいえ、おそらく半年程度（話の流れから見て半年以上は経っておるまい）の勤務で豪邸が経つほどの給料がもらえるか、となると疑問符がつきます。
　これはおそらく、宇宙（ＧＰ）と地球との為替レートの差でしょう。
　地球でも日本など先進国と開発途上国との為替レートの差は極めて大きい。例えば日本では単純労働者やフリーターでも１月２０万は楽に稼げるが、月２０万の暮らしと言ったらパラサイトシングルでもない限り独身者にとってもかつかつの生活になる。しかし後進国や開発途上国では、円に直して月に数万円というのがせいぜいというところも少なくない。一日の生活費が１００円そこらという地域だって珍しくもない。だから中国や東南アジア諸国では、日本に出稼ぎに来たがる労働者がすくなくありません。
　それと同じで、初期文明である地球の貨幣価値は、宇宙最先端の一角を担うＧＰやアカデミーからみたら相当安いものではないのでしょうか。
　しかも宇宙なら、定期預金の利率が１％以下などというふざけた超低金利じゃないだろうし……
　または本当にそれだけの給料がもらえたという解釈もあり得ます。日本でも例えばサッカー協会が世界の一流監督を招致するときは年棒にして２億近く払いますし、大リーグの花形選手は年棒で１０億以上もらっているものもいます。
　すなわち西南は、大リーグのスター選手なみの扱いとも解釈できるわけです。瀬戸さまやアイリさまの性格を考えればこれはあながち見当外れでもないはず。
　これならたった半年で日本円にして１０億以上のお金をもらっても不思議じゃないし、艦隊司令官なみの活躍は予想通りといえるわけです。
　どちらにしても、学生には多すぎるお金ですな。

・ネージュさまは２０００歳
　魎呼とタメ年だったのね。

・西南との別れを恐れる霧恋
　夜、西南と二人っきりで話をしていた霧恋がポツリともらした一言。
　　「あたしを、置いて行かないで」
　これは霧恋が、西南の立場や実力を認めたということでしょう。
　今までは西南の保護者として、西南を不運から庇ってきたのが霧恋でした。西南にとっての実質的な保護者だったわけですし、だから西南の身の上を案じて地球に帰るように説得までしていた。
　ところが西南は囮船の艦長として、着々と実績を上げつつある。その実績は明らかに霧恋なんかとは比べ物にならない。
　すなわち今までは西南の保護者として西南より上の立場にいたはずの霧恋が、いつの間にか西南の下にいると霧恋は認識している。
　もちろん西南の才能は、より実力のあるものに補佐してもらうことで発揮できるタイプ、というよりまだまだ西南は誰かにサポートしてもらう必要があるわけですが、その補佐役は何も霧恋に限ったことではない。雨音だってリョーコだっている。いつ置いて行かれてもおかしく無い状態だというわけです。
　それが現在、霧恋の抱えている不安なのでしょう。

　というわけで、次回は天地キャラ総登場。楽しみにしています。
　

初出：02/ 7/21 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx4.htm#16

　西南「天地先輩、ここには男の人は他にいないんですね」
　天地「ところでアイリさんに聞いたんだけど、西南くん、霧恋さんと暮してるんだってね。他にも雨音さんとか元海賊の人とかさぁ」

　天地、西南と続けば次の天地ワールドの主人公はきっと北東（ほくと）でしょう、多分。

　今回は天地ファンには感涙ものの天地ファミリー総出演でした。
　ストーリー的には柾木家の紹介以上のものはありませんでしたが、天地ファンのために登場させたという色合が強い今回はインターミッションとしては十分でしょう。

・天井から蛍光燈が
　福ちゃんのおかげで朝っぱらから不幸っぷりを見せてくれる西南くん。
　海も雨音たちもすっかり慣れてしまったようで。

・「これが生体強化ってやつか」
　不幸っぷりまでは生体強化しても変わらない西南くん。柾木家に向かう途中で、自転車がぶっ壊れます。
　天地と出会えただけでも良しとしなくては。

・魎皇鬼はお姉さん
　福ちゃんという妹さんが出来た魎皇鬼。人型の他に鷲羽ちゃんに驚かされてケモノ型に変身します。
　福ちゃんも成長すれば人型になる可能性はあるとか。普通に育てておけば良いらしいけど、育て方を間違えるともう一人の娘のようになるとか。
　そーか、神我人に育てられたから魎呼はあそこまでグレたんだな。

・アダルト鷲羽
　鷲羽ちゃんは外見年齢が自在なのは相変わらずでした。あれでも２児の、いや今は３児の母ですか。人をからかうのも相変わらずです。
　宇宙一の天才科学者という自負も相変わらずでした。
　西南のパーソナルデータからシミュレーションして、西南の囮っぷりの見事さを証明してみせた後、だから（１２話で）魎皇鬼が引き付けられたと解説してくれます。魎皇鬼も海賊船だから、西南に引き付けられたのだと。
　うーん、私はタラントとの決着が延び延びになった１２話のご都合主義に対して前回怒りましたが、まさかそういう裏設定があるなんて解説されるまで全く気付きませんでしたよ。
　あ、すると第２話で瀬戸様の船・水鏡が駆け付けてきたのも、樹雷がもともとは海賊国家だったからだとかそういう設定ですか。

・久々の砂沙美ちゃん登場
　正直に告白します。初見では砂沙美ちゃんの声ってこんなに大人びていたっけと違和感がありました。
　なにせ東大で開かれた「黒田倉田と愉快な仲間たち」で梶島氏が、急がないとそろそろ横山さんも砂沙美の声がやばいだろうなあと笑わせていただけに、横山智佐さんが砂沙美ちゃんの声の出し方を忘れたのではないのだろうかと思ったわけです。
　が、２回目にきいた時はそれほど違和感ありませんでした。やっぱり砂沙美ちゃんは砂沙美ちゃんだった。
　どうやら他のアニメのロリキャラ（例：美浜ちよ＠あずまんが）を聞いているうちに、砂沙美ちゃんの声を無意識のうちにロリイメージにしていたらしい。

・柾木家新メンバー、神木ノイケ
　第１期、第２期には登場しなかった神木ノイケさまが柾木家の新メンバーに。
　外見年齢的にも美星より年上で、神木瀬戸さまの養女だそうで、砂沙美と一緒に家事を取り仕切っているみたいです。今まで家事一切は砂沙美が取り仕切っていただけに、頼もしい方ですね。
　ＢＢＳでの情報によりますと、この神木ノイケはＯＶＡ版における美星の昔の同僚だそうです。瀬戸様が天地の婚約者に勝手に決めてしまったらしい。
　……魎呼や阿重霞と一悶着あったんだろうなあ。美星だってわんわん泣いてしまったりして。
　しかし柾木家女性陣にしては常識人ですな。美星の相棒ならそれだけの常識がなくては勤まらないが。
　西南を迎えに来た雨音に抱きつこうと駆け寄った美星を転ばせた時の手腕を見ても、美星の扱い方をそれなりに知っているみたいですね。さすがは元相棒。
　（反対に、鷲羽ちゃんは美星の扱い方を全然知らないから美星の偶然にいいように振り回されていたりします。宇宙一の天才なのに）

・自慢そうに伝説の鬼退治の真相を語る遙照
　宇宙の秘密を知ってるからと西南に柾木神社に伝わる鬼退治の伝説の真相を語る勝仁＝遙照。
　なんだかんだ言っても遙照は実は自慢したがりだったんだと判明しました。
　魎呼や阿重霞、天地の前で勝仁の変身を解いてしまいますが、どうやら第３期で実は老け作り（？）していることがバレてしまったのでしょうか。

・魎呼は福ちゃんのお姉さん
　魎呼は鷲羽ちゃんの娘で（鷲羽の卵子から作られた）、福ちゃんも鷲羽ちゃんの娘だということことは、確かに魎呼は福ちゃんのお姉さんですな。
　しかし西南が驚いて尋ねかけようとしたのは、きっと「魎呼さんも宇宙船に変身するんですか」だったに違いない。

・阿重霞はお嬢様だが
　……倉敷を襲った数々の災難が魎呼や阿重霞の引き起こしたものだと知ってしまう西南。
　倉敷西校のガス爆発が魎呼の仕業で、柾木家消失が阿重霞の仕業で、瀬戸大橋の崩壊が二人の意地の張り合いだったからなあ（ＯＶＡ１〜２話より）。

・実は再婚していた信幸
　信幸は事務所のレイナ（漢字不明）さんと再婚して新居を構えていた。
　さすがは一番の大人ですね（親父ですが）。再婚おめでとうございます。

・天地は鍋奉行
　これってＣＤ版天地無用！魎皇鬼’（ダッシュ）第１話「オタク、だれ？」に登場してきた設定ですね。
　天地は鍋料理には並々ならぬ情熱を持っています。

・偶然の天才、美星
　……が、間の悪い美星のおかげで鍋がオシャカに。
　２度目の鍋料理では食べようとしたら西南にＧＰの帰還命令が。相変わらず不幸ですな。

・柾木家の戦闘力
　話にでてきただけで
　　阿重霞の樹雷第２世代戦艦・龍皇
　　ノイケの樹雷第３世代艦・キョウコ（漢字不明）
　　砂沙美の皇家の樹始祖・津名魅
　　魎呼の海賊艦・魎皇鬼
　　銀河一の天才・プロフェッサー鷲羽
　　ついでに美星
　　遙照の樹雷第１世代戦艦・船穂も健在
　　天地にも不思議な力がある（自力で光鷹翼を展開できる）
　設定だけですごく豪勢なメンバーですな。
　鷲羽ちゃんは、美星だけで十分な戦力だと言ってましたけどね（ＯＶＡ１３話より）。
　かつてタラントが西南の家族を人質に取ろうとした時、天地たちに返り討ちに遭ったらしい。どこまでも三流なやつめ。

・ＧＰの帰還命令で
　ごくごく自然にネージュが乗組員の一員になっていますなあ。これで西南の力も倍増ですか。

・実は犬扱いだったＮＢ
　喜子に犬小屋に繋がれてしまったＮＢ。放置っぽいプレイだとゾクゾクしていたが、実は犬程度にしか見られていなかったことを知ってショック。

　全然関係ないけど、第２クールに入ってからエンディングの西南がこけているシーンで、背景に書かれてる女の子が変わっていたことには以前から気付いていましたが、それが喜子とネージュだとやっと思い至りました。ちょっと嬉しい。
　あー早く天地第３期登場しないかなあ。
　

初出：02/ 7/28 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx4.htm#17

　静竜「まさか、この壷は最大の幸運を呼ぶといわれるシアワーセの壷」
　コマチ「なんだそりゃ！」

　ストーリーに関係ないところでは徹底的にいい加減ですなぁ。

　今回は絵コンテがナベシンのせいか、前回とは打って変わってアップテンポなギャグ話でした。
　もともとナベシンはこの手のギャグの得意な監督なのですが、脚本の佐藤勝一もＧＸＰのギャグ回（第８話など）を担当することが多く、今回は完全に意味のないギャグの回となりましたね。

・ダ・ルマーの幸運艦隊
　ダルマさんにまねき猫、紅白のたれ幕に寿の文字。文字どおり幸運グッズに身を固めたダルマーの幸運艦隊が樹雷の艦隊を出し抜いていきます。
　付け焼き刃の幸運で樹雷の艦隊を手玉に取れるかー！　と叫びたい気持ちはありますが、もともと天地ワールドは宇宙一の科学者が偶然の天才に振り回されることのある世界。実は有効な対策なのかもしれない。
　もしここで目には目をということで樹雷側も幸運グッズに身を固めたらと考えたらぞっとしますな。海賊ギルドが既にその有効性を実証しているわけだし。幸運グッズに身を固めた瀬戸様……いやすぎ(笑)
　実際には瀬戸様は西南に海賊追撃を依頼したわけですが、賢明な判断です。

・人知を越えた戦い　
　ダ・ルマーの幸運艦隊 vs. ローレライ西南の悪運。努力も根性も火力も技術力も全く関係ないレベル(笑)での戦いが始まった。雨音が愚痴る気持ちも分からなくもない。
　もともと天地世界の戦いでは設定による圧倒的実力差で勝負が決まってしまうパターンが多いのですが、幸運対悪運の戦いとなればこれはもうキャラ設定だけで勝敗が決まってしまい、戦いとか戦術とかは全く無意味になってしまうことがよく分かります。
　というか、名前も無い海賊艦隊の艦長が西南に勝とうというのが無謀か。
　それにしてもローレライ西南とは……。宇宙にもローレライ伝説があったんだ。

・メカ・タラント
　最初は最凶の悪役として登場しながら、パワーアップした主人公にあっさりやられて、最後にはメカ化したものの他のキャラの引き立て役に終わる。……タラントの役どころはドラゴンボールのフリーザですな（桃白白（タオパイパイ）でも可）。
　最後まで三流の汚名は濯げませんでしたね。

・建造資金を使い込む３バカトリオ
　静竜とのジャンケン勝負で勝利したアラン、バリー、コーン。ダ・ルマーがジャンケン勝負を認めたのは、目的が強い奴ではなく幸運な奴を選ぶためだったのでしょう。
　しかし、ダ・ルマーからの幸運艦建造資金を宴会に使い込むようでは……
　逆に、自販機の宝くじで一発必中させた静竜の方が確かに幸運なのかもしれない。

・最強幸運艦艦長、静竜
　父親にお得意様だからと言われＧＰ隊員の誇りも捨て、ダ・ルマー海賊ギルドに全面的に協力する静竜。ここまでバカだったとは知らなかった。
　三流とはいえ仕込み武器のメカ・タラントを一撃で倒したのだから、実力はあるはずなのですが。
　ちなみに静竜が集めようとした（稀少）幸運グッズは以下のとおり。

通販で宇宙中からかき集めた怪しげな幸運グッズ

幻の雪男ビバゴンの牙

幸運の鼻ピアス

伝説の白いゾウ（象？像？）

西部の秘宝・ウェスタンルビー

黄金のダルマ王

巨大蠍が守っているピンクオパール

ブラックホールにあるという幻の……

最大の幸運を呼ぶといわれるシアワーセの壷

初出：02/ 8/ 3 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx4.htm#18

　ダ・ルマー「あと少しのところで守蛇怪を逃がしたのは残念であったな」
　静竜「そうでなくては私のライバルとは言えん。だが次こそは必ずトリプルビンゴを決めてやる！」

　静竜、お前いつから西南のライバルになった！

　今回は雨音のモデル話でした。今のＧＰの職に誇りを持っている雨音の姿が描けていましたね

・静竜の最強幸運艦との戦い
　ゴテゴテと幸運グッズで身を固めた静竜の最強幸運艦。ビンゴマシーンで進路を決定して守蛇怪の攻撃を避けながら、ビンゴを決めて反撃する幸運艦の前に、さすがの守蛇怪も大破します。
　今まで優位に立っていた主人公側が油断している隙に、敵が対抗策をとって反撃したため苦戦するという王道の展開ですね。
　しかし、その対抗策というのが幸運グッズの収集で、主人公側の油断というのがリゾート地でのバカンスでしたからねえ（１８話参照）、これはシリアスなのかギャグなのか笑っていいのかふざけてると起こるべきなのか……
　なにか、ギャグとシリアスを際どいバランスで綱渡りしているような感覚でした。

・ＧＰ職員のためのファッションショー
　母親の策略と美守校長の業務命令で、雨音がＧＰ職員のためのファッションショーに出演することになります。
　最初に（父親も）実は許しているのですけどと言っておきながら、実は許しているのは「私はね」だったというレトリックを使った雨音母もなかなかの策略家ですが、このショーはカウナック社主催みたいですし、雨音父が娘をモデルに連れ戻すために仕組んだショーじゃないかって邪推するんですが。
　美守校長はＧＸＰでは数少ないシリアス専門キャラですな。待機命令違反した霧恋やリョーコを見咎めたり、ベガの嫌みでくさってた雨音に絶妙のタイミングで「動くマネキンには真似できないものを見せておあげなさい」と励ましたり。この手綱捌きはとてもあの美兎跳の母親（美星の祖母）とは思えません。

・雨音は元モデル
　ＧＸＰの設定では美星は一級刑事なのに雨音は二級刑事。
　この設定にはずっと引っかかっていたのですが、梶島正樹さんの同人誌「お祭り前日の夜ＧＸＰ編」によると美星と雨音はＧＰ時代以前からの幼なじみとなっていたので、ようやく納得しました。
　つまり雨音はＧＰに入隊する前にしばらくモデルをやっていたから、ＧＰ隊員としての職歴は美星の方が先輩になるのでしょう。
　昔の雨音はフランス人形のようでほとんど別人なのですが、美星にとってはそんなの関係なく、きっと一目で入隊してきた雨音を見分けられたのでしょう、多分。

・嫌みな女ベガ
　ベガというと某赤い軍服のお方を連想するのですが、もともとは女性の名前。雨音の元同僚でねちねちと嫌みな性格のトップモデルでした。
　話の展開としてはこういうキャラも必要でしょう。しかしベガとしてもトップモデルとしてのプライドがあります。かつては社長の娘という七光りでモデルをやり、今ではＧＰ隊員のはずの雨音がモデルをやることには痛くプライドが刺激されるのでしょう。
　しかしあの描写ではただの嫌な女としか見えませんな。
　しかも戦闘用コスチュームでは明らかに畑違いなのに無理矢理出場して自滅してるし。

　話の流れが前回と繋がっていませんが、インターミッションとして雨音のドラマが描けていました。その代わり美守校長以外の周囲のキャラがギャグキャラになってしまっていますね。ここらへんの割り切り方は如何にもナベシン監督風味ですが。
　

初出：02/ 8/10 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx4.htm#19

　玉蓮（すっと表れて）「西南さま……」
　翠簾「先輩……、これ読んでください」
　珀蓮「なんとお詫びをすればよいか。お願いです、嫌わないでくださいまし」
　火煉「決まってんだろ、責任ていやぁ……その……なんだ……」

　ツッコミどころが多過ぎてもはやどこから突っ込んでいいのか分からない……。

　今回で２０話。普通のシリーズならそろそろ最強の敵というものが表れてもおかしくはないが、ＧＸＰではそれが静竜と幸運艦『運呼』のことだったようだ。

・命名：最強幸運艦
　どうやら宇宙では艦名の登録は、インターネットのHTTPアドレスのように先願制のようですな。静竜が名付けようとした縁起の良い艦名はことごとく登録されていました。
　別に海賊なんだから、船名の登録ぐらいアングラでやってしまえば良いじゃんと思うのだが。あるいは名付けようとした艦をこちらで先に襲撃して沈没させるとか。
　……あ、だから西南の船の名前が「守蛇怪（かみだけ）」なんだ。この暴走族レベルの当て字はなにかと思っていたけど、並み大抵の船名では他に取られているとか。鷲羽に頂いた２隻目も「守蛇怪」なのは、他の名前にして船名登録でややこしいことになるのを嫌ったためなのではないだろうか。
　雨音曰く、静竜の頭は幼稚園レベルから変わっていないとのことですが、さすがに否定できない。コマチ・キョウコが名乗りを止めようとしたのも無理はないかも。
　しかし静竜よ、お前達筆だったんだな。

・霧恋と樹選びの儀式
　幸運艦への対抗策として、瀬戸様は霧恋に樹選びの儀式を命じます。本来樹選びの儀式を受けるのは皇族（樹雷四皇家）のみとされています。霧恋が樹選びの儀式をうけるということは、樹雷の皇族に迎え入れるという意味合いがあります。
　柾木家は樹雷四皇家の中でも結構勢力が弱いので（現樹雷皇は柾木家の出身だが）、柾木家としては一族が増えるのは歓迎すべきことでしょう。神木家も瀬戸様が指示されれば反対するものはおるまい。問題は天木家と竜木家がなぜ賛成したのかということだが、そこらへんはどうなっているんでしょうかね。
　瀬戸は躊躇する霧恋に対して恋敵の雨音（カウナック家令嬢）、リョーコ（バルタの末裔）、ネージュ（巫女）を引き合いに出します。芸の一つもと言ってますが、樹雷の皇族になればこの３人より身分は上になってしまわないだろうか。少なくとも肝心の西南は、運が悪いのだけが取り柄の平凡な地球人なんだし、身分の違いが障害にならなければ良いんだけど。

・守蛇怪と水鏡のリンク
　魎皇鬼型と皇家の樹はリンク可能という設定は、ＯＶＡ１３話を元にしていますね。
　ここで船穂が地球に根づいているのに力を失っていないことに話が及び、魎呼の持つ宝玉のエネルギーと皇家の樹のエネルギーは同質のものであると言及されています。

・静竜の対抗策
　より幸運を強固にするために、幸運グッズおよび運の良い乗組員の選別を始めた静竜とダ・ルマー。
　しかし、船の名前が「うん○」では……。海賊たちも乗組員で選ばれないよう祈っているし。
　というか、ここで乗組員に選ばれた海賊は、運がいいのだろうか、それとも悪いのだろうか。


・４人娘の過激な西南接待
　玉蓮、翠簾、珀蓮、火煉の４人娘が西南に迫る！　これって瀬戸様の命令なのかしらと突っ込む気にもなれない。
　気配を消して寝所に忍び込む玉蓮はまだしも、翠簾は行きなりぶつかって先輩と声をかけてのラブレター婚姻届。珀蓮はメイド服姿での水打ちでわざと水をぶっかけて嫌わないでください攻撃。火煉は男湯で待ちうけての責任取れよ攻撃。
　この人たち、日本のラブコメ漫画か何かで誤解しているのではないのだろうか？　地球式の求愛を学習するためとか称して。
　ただ、気にかかるのはどうして４人娘たちが西南にこんな露骨な──というよりふざけたアプローチをかけているのか。瀬戸様の意思があるのは間違い無いだろうが。
　私はこれは、西南の背後にいる鷲羽が理由の一つではないかと睨んでいます。
　もともと鷲羽は気に入った相手にしか力を貸さないタイプです。いくら銀河最強国家の樹雷相手でも平気でつっぱってしまいかねないし、実際に対抗できるだけの科学力も備えている。
　しかしながら鷲羽は西南に自分の娘の福ちゃんを預けている。これは西南に興味があるから。すると同じく西南に興味を持っている瀬戸様にとっては、西南を介して鷲羽の協力が得られている状態にある。
　となれば西南の身柄を何らかの形で（合理的に）樹雷が抑えてしまえば、鷲羽の協力がこれからも得られるという功利的な理由があるからではないかと思うわけです。
　もっとも、ただ単に西南を気に入っているからという理由の方がありえそうなのだが。

・そのころ雨音たちは
　雨音、リョーコ、ネージュの３人の接待は雪山登山。階下にこんなところがある樹雷の王宮って一体なんなんだ！？
　というか、この３人はそれなりに身分や地位の高い連中だろうが。接待で死なせてたら国際問題になるぞ。
　そしてＮＢにはナＢ子という接待用ＡＩメカが。辛かったろうねえ。

・霧恋の第２世代艦ミヅキ
　そして霧恋は第２世代の皇家の樹ミヅキを手に入れます。皇族の格は皇家の樹によって決まるので、これで霧恋は（立場的には）阿重霞に匹敵する皇族ということになりますね。
　現在第１世代の皇家の樹は、阿主沙の霧封（きりと）と遙照の船穂の２本しかないはずなので、第２世代間とは

　というわけで、今回とうとう霧恋さんが樹雷の皇族になってしまいました。もしかして未来の樹雷皇候補！？
　

初出：02/ 8/15 http://homepage1.nifty.com/junhelm/consider/tenchi_gpx4.htm#20